土曜日, 26.05.2012 22:40
 
 

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MADE IN GERMANY

ヴェストファーレンの家具産業クラスター

のどかな田園風景が広がるドイツ中央部のヴェストファーレン地域は、家具業界では国内で最も重要な地域。ここでは、とくにキッチン家具の製造が盛んに行われている。

文 ユルゲン・ブレーカー 写真 トルステン・アレント

ここは、ノルトライン=ヴェストファーレン州北東部の小都市レーネ。地名標識から数メートルのところに、「キッチンの世界都市にようこそ!」と、グリーンの地に黒い字で記したスマートな石柱が立っている。オストヴェストファーレン=リッペ地方の人口わずか4万ののどかな町、レーネにしてはずいぶん大胆な肩書きと思うひともあるかもしれない。しかし実際に、この町は2010年のドイツのキッチン家具産業全体の売り上げのほぼ3分の2に当たる25億ユーロを稼ぎ出しており、オストヴェストファーレン=リッペが世界的にも極めて重要な台所家具産地であることは確かである。1日に2,200ものユニットを生産する大手家具メーカー、ノビリアはここを本拠地としているし、絶えざるイノベーションを旨とし、これまでに何度も斬新なトレンドを打ち出してきた創業120年以上の老舗企業ポーゲンポールもここに居を構える。また、ダニエルマイヤーのような家具用部材サプライヤーも少なくない。この中堅企業の事業分野は、システムキッチンの天板。レーネに本社を置く同社は、ハーメルン近郊に複数の工場をもち、一日当たり1,200枚の天板を生産している。「1990年に、木製モールディングの製造から天板製造に事業の軸足を移したときは、一日当たり天板生産量はわずか40枚にすぎなかった」と、同社のレギーナ・ダニエルマイヤー社長は言う。今日では、スウェーデンのある大手家具メーカーと地元の家具メーカーが同社の重要な取引先だ。

 

オストヴェストファーレン=リッペがドイツの家具製造のメッカに発展し得たのは、歴史的な理由による。重要なものとしてよく指摘されるのは、地元に材料が豊富にあることと周辺に大きな販路があることのふたつだ。工業化時代にはオストヴェストファーレンとザウアーラントの森林は木材をたっぷり供給してくれたし、当時爆発的な人口増加をみたルール都市圏とはケルン=ミンデン鉄道によって結ばれていたのである。今日では、オストヴェストファーレンの家具メーカーにとって重要な交通路は、アウトバーン(高速自動車道路)2号線と30号線。もっとも、大部分の家具の発送先は国内ではなく世界中のあらゆる地域だ。例えばポーゲンポールなどは製品の75パーセントが輸出向けで、輸出先は現在70カ国以上にも上っている。しかし、生産地は昔も今も、オストヴェストファーレン。「“メイド・イン・ジャーマニー”というマークは、国際レベルでは非常に重要です。このマークが“マニファクチュア(工場制手工業)を基本とする高品質の証として高く評価されていることが、外国へ行くとよく分かります」と、ポーゲンポール広報担当部長であるトーマス・オーベルレは語る。一方、レギーナ・ダニエルマイヤーによると、「家具メーカーが密集していて、企業の決定権者とコンタクトが取りやすい」ことも大きな長所だ。さらにオーベルレは、「ここの家具産業クラスターは、われわれにとって極めて重要です。高度な専門教育を受けた職人が揃っていますし、大部分のサプライヤーは半径50キロ以内のところに集まっていますから」とも、語っている。ポーゲンポールはヘアフォルトに本社を置く。家具産業の主要な団体、連盟が事務所を構えるヘアフォルトは、まさにドイツの“家具産業の首都”とも呼べる都市だ。

 

インターリュプケとCORのレオ・リュプケ社長は、レーダ=ヴィーデンブリュッケにある執務室のどっしりした黒いデスクの向こうに座っている。工場は、そこからわずか数百メートルしか離れていない。ベッド、キャビネット、間仕切り、シェルフ、ワードローブなどを中心に幅広いシステム収納家具を製造する高級家具メーカー、インターリュプケは、機能性、合理性を重視したシンプルなデザインとカラーバリエーション、表面仕上げが極めて豊富なことでも知られている。工場見学に訪れたひとは、ホワイトはただ一色ではなく、クリスタルホワイト、スノーホワイト、ウールホワイト、パールホワイトなどいろいろな色調があることを塗装工程で学ぶ。しかし、見学者が最初に案内されるのは、チップボードやMDFボード、合板などの家具の基材を所定のサイズに切断する現場だ。ここでまず目に入るのは、様ざまな大きさの基材を正確に裁断し、切断面に誤差1ミリ以下の精度でエッジ材を貼付ける巨大な機械である。「ボードとエッジ材のつなぎ目が完璧でないと、塗装処理で一体感のある仕上がりになりません」と、工場見学案内役を定期的に引き受けているハラルド・ボッフェンマイヤーは説明する。次の工程では、ペーター・ベームがコンピュータ数字制御のボール盤で、ボードに穴を開けている。ベームは穴加工の専門家だ。デザインによる素材と穴の形状の組み合わせは無限に近いほどあるため、彼の作業台の引き出しには刃の形の様ざまなドリルが約300本も並んでいる。外からは見えない部分の作業だが、ベームはこの仕事に強い誇りを抱いている。「インターリュプケのロゴのついた家具は決して安くはない。お客さんが質の高い仕上げを期待するのは当然です」とベームは言う。

 

家具製造の前段工程は、材料切断、穿孔などの木工加工作業である。作業場には粉塵が飛び、木の香が漂う。これに続くのは後工程の塗装で、木材に代わって塗料の匂いが辺りに充満する。色彩は全て記号で表示され、クリスタルホワイトはM02だ。塗装作業にとって、粉塵は最大の敵。基材表面の粉塵は、ブラシや掃除機やエアガンなどで徹底的に取り除かれる。そして下塗り、上塗りと、ひとつひとつ層を重ねていって、塗装は完成する。「粉塵がひと粒でもあると、仕上がりに響きます」と、ボッフェンマイヤーは言う。板が完璧に塗装されたかどうか検査するのは、ヘルムート・デーイングハウスの仕事だ。一枚一枚手に取り、指で触れ、汚れをとったり磨いたりする、板の数は日に最高600枚にもなるという。「決められた基準が守られているかどうか、検査はあくまでも厳密でなければなりません」と、熟練の塗装職人は語っている。

 

他社に差をつけることができるのは、ベームやデーイングハウスのような信頼のおける熟練の職人たちのおかげと語るレオ・リュプケは、こうした優れた職人が生まれたのはオストヴェストファーレンでは他に見られないほど職業訓練・継続教育環境が整っているからだろうと指摘する。デトモルトの家具職人専門学校、ベックムの木工専門学校、さらに近隣のパーダーボルンとビーレフェルトにある専門大学は、家具職人育成に役立つ優れた内容の履修コースを提供している。「家具産業クラスターのもうひとつの大きな利点は、企業間ネットワークが密なことです」と語るリュプケは、同業他社との交流を大事にしており、情報交換のための定期的な集まり━━例えば、ヘアフォルトにある連盟の定期会合など━━には必ず出席するという。オストヴェストファーレン以外の地域に拠点を移そうと考えたことは一度もないというリュプケに、「では何故、ここの宣伝をしないのですか」と尋ねると、こんな答えが返ってきた。「製造拠点の宣伝なら、“ドイツ生まれの家具”という風にやっていますよ。“メイド・イン・オストヴェストファーレン=リッペ”というより“メイド・イン・ジャーマニー”と言った方が、やはり国際的に通りがいいですからね」。///

09.09.2011
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